猫は室内だけで飼っても大丈夫?

部屋で過ごす猫
今は、猫を室内だけで飼うことが一般的になっており、「半分野良」という状態で飼育する人は少なくなりました。しかし、家に閉じ込めていたらストレスがたまってしまわないかと心配になる飼い主さんも少なくないようです。飼っている猫が窓際に座ってじっと外を見ていると、「外に出たいのかな?」と思うことがあるかもしれません。

外の世界に関心をもち、隙さえあれば外へ出ようとする猫はいるでしょう。しかし、外に出すことのリスクは非常に高く、猫の安全のためにも、完全に室内飼育することを環境省でも推奨しています。

野良猫が出歩くのは、食べものと安心できる場所を求めて。食べものが豊富にあって安心できる場所があれば、わざわざ危険を冒して歩きまわることはありません。「狭いところに閉じ込めておくのはかわいそう」というのは、猫=外のイメージが強いために生じる思い込みのようなものです。

猫を外で放し飼いするリスクとは

エリザベスカラーをつけた猫
環境省が定める『家庭動物等の飼養及び保管に関する基準』では、「第5 猫の飼養及び保管に関する基準」において、猫の室内飼育に努めることが明記されています。

猫を外で放し飼いすることは違法ではないですが、猫にとってリスクが高く、危険と隣り合わせです。飼い主の知らないうちに猫が外で人やものを傷つけてしまった場合、飼い主が責任を問われる可能性もあります。

猫を外飼いすることで生じるリスクは次のようなものがあります。
参考文献
環境省 『家庭動物等の飼養及び保管に関する基準』(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_h25_82.pdf

交通事故や猫同士のけんかに巻き込まれる

外飼いで一番怖いのは、猫が車にひかれるといった痛ましい事故に巻き込まれること。都会であっても田舎であっても、放し飼いにする以上は常に交通事故に遭うリスクがつきまといます。

また、野良猫などとの縄張り争いが、大げんかに発展してしまうこともあります。激しいけんかでの負傷が原因で、命に関わる病気を引き起こすおそれもあるのです。

ノミ・ダニの被害、感染症にかかるリスクが高まる

外飼いの場合、ノミやダニといった寄生虫による被害を受けたり、野良猫などから感染症がうつったりするリスクが高まります。そのほか、外で誤飲・誤食してしまう危険性もあります。

猫が外を出歩くと飼い主の目が届きにくくなることから、日々の猫の健康管理が難しくなります。病気やケガの発見・治療が遅れてしまい、重症化してしまうケースも出てくるでしょう。
そのため、外飼いの猫は家猫と比べて寿命が短くなるともいわれています。

盗難や虐待にあう可能性がある

たとえ首輪がついていたとしても、猫が盗まれることがあります。盗まれた先ではどんな扱いを受けるかわかりません。また戻ってくる可能性はかなり低いです。

飼い主が見ていないところで、愛猫が心ない人から虐待を受けるケースがあります。不特定多数の人々が行き来する場所では、虐待の犯人を特定することが難しく、泣き寝入りするしかないことも。

虐待を受けた猫は人間不信に陥ってしまいます。その結果、飼い主にも寄り付かなくなる、問題行動を起こすようになる、といったことも十分考えられるのです。

猫を完全室内飼いするメリットとは

飼い主と過ごしている猫
猫の寿命は年々伸びていて、現在では14.7歳です。
20歳を超える猫も珍しくなく、「長くて10年」といわれていたころとは比べものになりません。

猫の寿命が延びた理由はキャットフードの質向上や医療の進歩、飼育環境が整ったことだとされています。その証拠に、野良猫の平均寿命は3~5年と、飼育されている猫よりかなり短いまま。屋外で暮らしていると、猫同士のけんかや交通事故、病気など、さまざまな危険にさらされます。自由の代償は大きいのです。

室内飼いの場合はそのような危険がないとともに、飼い主が猫の健康管理に気を配れて、少しの異変にも対処しやすいというところもポイントでしょう。
猫を完全室内飼いするメリットは、第一に「健康で長生きする」ということです。かわいい愛猫とはできるだけ長く一緒にいたいですよね。
参考文献
アニコム 家庭どうぶつ白書(https://www.anicom-page.com/hakusho/

猫を満足させる部屋を作ろう

キャットタワーで遊ぶ猫
猫を完全室内飼いすると決めたら、猫が満足できる環境を整えてあげましょう。最低限必要なのは、猫が上下運動できるスペースと猫が落ち着けるスペースです。

キャットタワーを用意する

猫は上下運動と高い場所が好きなので、キャットタワーを用意しましょう。
飼い主が棚などを組み合わせて段差を作るのもいいですが、きちんと固定して、置く荷物も考えないと倒れたりものが落ちたりして危険です。

手軽なのは爪とぎと一体になっている市販のキャットタワーです。猫の運動能力に合わせて選んでください。また、爪とぎはキャットタワー以外にも複数用意しましょう。

猫が落ち着ける場所をつくる

猫には狭いところに入る習性があります。敵から襲われないように身を守り、獲物をほかの動物に取られないようにしていた野性時代の名残です。

猫の落ち着ける場所は、その観点で探してみてください。カゴや猫ベッドなどに毛布やタオルを置いてあげるといいですが、それぞれ好みは異なるので、愛猫の様子を見てから場所を整理するのもよいでしょう。

猫は勝手にお気に入りの場所を見つけるので、猫がよくいる場所があれば、よほどの不都合がない限り放っておいてあげてください。

トイレと食事場所は離して設置する

猫は本能的にトイレをするときは敵に襲われないようにと、緊張状態になる場合があります。そのためトイレは部屋の隅など静かな場所に設置するのがおすすめです。

食事場所はトイレの場所からできるだけ離して設置しましょう。猫が落ち着いて食事できるように、テレビの近くや人がよく通る場所は避けてください。

家のなかで気をつけたい猫の危険ポイント

部屋を散らかしている猫
「家の中なら絶対に安全!」ということはなく、猫を飼ううえで気を付けたいポイントがあります。猫を危険な目にあわせないようしっかりチェックしておきましょう。

誤飲・誤食

まず気をつけたいのは誤飲・誤食です。

猫が中毒を起こす食べものはもちろん、人間の薬や輪ゴム、ボタン、糸くずなど、飼い主が予想しないものを飲み込んでしまうことがあります。猫はひも状のものが好きなので、とくにひも状のものは気を付けましょう。

部屋の中は常に整理整頓し、物を出しっぱなしにしないのが誤飲・誤食を予防する第一歩です。

電気コードへのいたずら

電気コードもひも状でいたずらされやすいです。コンセントにプラグを挿している状態で噛むと感電してしまうことがありますし、電気コードで遊んでいるうちに電化製品本体が落ちてくる可能性もあります。

できるだけ電気コードはカバーをつけ、床や壁にしっかり這わせて配線しましょう。

ドアによるトラブル

飼い主が猫に気付かずに勢いよく閉めてしまったり、風などで閉まったりと、猫がドアに挟まってしまうトラブルもよくみられます。

猫がいる位置を把握しておくとともに、ドアを開けっぱなしにしない、ドアストッパーを活用するといった対策をしておきたいですね。

お風呂や家具による事故

猫が知らないうちにお風呂場に入り、お湯を張ったままの浴槽に落ちて溺れるといったことも起こる可能性があります。浴槽にお湯をためたままにしない、お風呂場の扉は必ず閉めるなど対策を徹底しましょう。

そのほか、カーテンやカーペット、ソファなどの布製品に爪が引っかかって折れるなどの事故もよくあるものです。
部屋の中を猫目線で点検し、危険性をあらかじめ排除しておくことが猫の飼い主に必要です。

まとめ

外を見ている猫
猫がじっと窓の外を見ていると、「外に出たいのかな」とかわいそうに思う飼い主は多いです。しかし、猫としては自分のなわばり(家)の境界をパトロールしているだけで、とくに深い意味はありません。
それよりも、猫が快適に暮らせる環境を整えてあげることが、猫の飼い主としての努めです。安心安全で快適な環境をつくり、かわいい愛猫とできるだけ長く一緒に暮らせるようにがんばってくださいね。